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私たちは触れられるから
「輪郭」がなぞられていく
– 魔法の絨毯 / 川崎鷹也さんの歌を聴きながら –
「言葉をあげられる女は
いくらでもいて
だけど、時間をあげられる女は
一人しかいないんだ」ってさ。
本気の恋って、そんなもんなのかな。
ある日のこと。
お客様があまりにも
真剣に悩むので
カウンター越しに一生懸命考えていた。
どうして好きな人とは
真正面から向き合えないんだろうね。
恋に生かされる人生なんて御免なのに
それでも輪郭がはっきりしない私たちは
「触れてもらえない」と
何が愛なのか恋なのか
途端に見失ってしまう生き物だから。
私は25歳で離婚して
ずっと一人で
割と懸命にこの子と頑張ってきてて。
父親を作ろうと
頑張ったこともあったけれど
娘には父親よりも
幸せそうな私の方が、必要で。
振り向いてくれない彼を
追いかける私の背中は
娘が「幸せそうじゃない」と
気付かせてくれたみたいで
「私パパはいらない」
その一言で
目が覚めたことを今でも思い出す。
去年のクリスマスのことだった。
はじめての
「大切な人がいない」1年間。
寂しかったけれど
これは試練だと思ってたんだよね。
寂しさを埋める恋は
必ず何処か間違える。
焦ったり空回りしたり
周りが見えなくなっていたり。
本当は恋は「叶うまでのプロセス」が
楽しくなくちゃ意味がないのに
女はいつも尽くしてしまうから
付き合えるまでがゴールで
付き合うまでの時間が
楽しくなくっても良しとしてしまう。
うんうん、そんなの間違ってるよね。
女だけ感情を押し殺す恋愛なんて
不平等でしょ。
だってこちらには
あなたが居ないと生きていけない程の
「想い」があるのに
あなたには私が居なくても生きていける程の
「強さ」がある。
そんなの最初からフェアじゃない。
結局、結婚しても親になっても
夫婦の血は一生繋がらない。
同じ屋根の下にいても
ずっと「他人」のまま。
どうせ一緒に生きるなら
お互いが離れていても
「失いたくない」と思えたり
高め合えたり、支えになっていたり。
それでいて言葉は与えられなくても
限りある時間は
惜しみなく与えられる相手でありたいと
そう思う訳で。
本気の愛は
目で見えるものでは
測れないことの方が、きっと多い。
耳を塞いで
相手をよくみていると気づける
私たちだけの愛の形もあるわけで。
全部を言葉で計ろうとするから
余計に分からなくなっていく。
それこそ「思い込みの世界の中」では
私だけが運命の人で居続けたら良いわけで。
私は恋も仕事も
成功するまでのプロセスがつまらないなら
ゴールしても意味がないと思ってるよ。
過程が楽しいから人を愛せるのに
過程が辛いなら
最初から君を愛せる要素にならないから。
私はいつも冷めた心で
少し距離を置いて
大切な人をずっと想って、生きてきた。
あの人には
私は必要ないかもしれないけど
でも、言葉はくれない代わりに
かけがえのない時間をくれる人。
たくさん、成長させてくれた人。
「認められたい」と
踠き苦しむ私を確かに捕まえて
「ゆっくり頑張りなさい」と
ちゃんと叱ってくれた人。
だからこそ
死ぬまで大切に想っていたくて
離れた人もいたわけで。
よく男も女も
「あの頃辛かったから逃げたけど
逃げた後に幸せだったことに気がついた」とか
「失った後に大切さに気がついた」とか
言うけどね。
恋愛中は
幸せな事99%よりも
辛い事1%の方が重く感じるもの。
視野を妨げるもの。
逃げ出して辛い事0%になると
途端に幸せな事しか残らないから
…そう、思うだけ。
つまり、逃げたから幸せな事に気付けただけ。
多くの人が恋愛中に
幸せな事だけ感じられるなんて
器用な事はできないよ。
だから「逃げたこと」を後悔しなくていい。
人はそんなに器用じゃないから
辛い事1%に負けちゃうくらい
弱い生き物だから。
逃げ出したからこそ
霞んだ視界がクリアになって
人は「幸せな思い出だけ」に
真っ直ぐ触れられるようになる。
そうやってね
過去の綺麗な思い出だけを見ることで
次の恋愛に活かされていくのだ。
どんないい女もいい男も
過去の恋人のお陰様。
最初からいい女もいい男もいませんよ
そんなの、当たり前じゃない。
久しぶりにね
お客様の恋愛相談を真剣に受けたら
自分の中で
押し殺していた記憶が再熱してきて
ちょっと笑っちゃったんだよね。
今よりも美しくなれる恋愛なら
「結果」はなんでもいいんじゃない?
付き合う事も結婚することも
「ゴール」じゃなくて「スタート」だ。
何もかも
そこから始まるわけだから
恋愛のプロセスが最高なら
「結果」なんて、気に留める必要なんてない。
女は恋することで
「曖昧な輪郭」がなぞられていく。
そっと、ゆっくり、あなたらしい美しい形に。
私の半生が自叙伝になりました。
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